KASUBABA 2011–2020

発刊:2025年4月24日
価格:5,280円(税込)
仕様:A4変形判、上製本、ジャケット巻
頁数:192頁(フルカラー)
ISBN978-4-907083-91-5 C0070

 

 

鷹野隆大の〈カスババ〉シリーズ第二弾!

本書は2005年に木村伊兵衛賞を受賞し、現在も国内外で活躍する写真家、鷹野隆大が、撮影する行為を日常化し、一瞬の街の動きを記録した〈カスババ〉シリーズから、2011年~2020年の作品をまとめた最新の写真集。「カスババ」とは、カスのような場所(バ)の複数形を意味する鷹野の造語。全167点の作品を収録し、徹底的に再現性にこだわって制作した一冊。限定850冊で、全冊にエディション番号付き。

【目次】

作品
KASUBABA 2011–2022

論考
「目こぼし頌歌」マーク・フューステル
「KASUBABA 2: 2011–2022」鷹野隆大

展覧会歴
作品リスト

【論考より】

写真は記録する。一瞬の街の動きを、人の視線を、木々のゆらぎを、川面のきらめきを、波の雫を、大気の動きとその光と影を。
写真はレンズの前にある対象を機械的に記録する。ここにおいて人類は初めて「客観的な記録」と呼べるものを手に入れた。だが忘れてはならないのは、それは不完全な記録であるということだ。
写真は奥行きを圧縮して平面の像を生み出す。つまり、画面の手前にあるものと奥にあるものとの間にどの程度の距離があるのかは、経験則に基づいて推測しているにすぎない。
[中略]
構図が奪うのは奥行きという距離である。当然、その像においては前後関係が曖昧になる。この、前後が混乱し、対象の意味が?落した世界で別の意味を与えられた像こそが、写真の生み出す新たな虚構世界である。もちろん完全な虚構ではない。現実の記録が虚構に侵食された様子が現れているイメージだと考えている。
このことを明確に意識できたのは2020年の後半であるが、ここに収めたのはそれより前、2011年から2020年にかけて撮影した写真である。つまり、ほとんどすべての写真はこうした意識を持たずに撮影したことになる。それゆえ、撮影時に意識していなかったものを後付けたという解釈も成り立ちうるが、わたしとしては、こうした意識の予兆に導かれて撮影したと考えている。
──鷹野隆大

 

鷹野 隆大  (タカノ リュウダイ

1963年福井県生まれ。早稲田大学政治経済学部卒業。「セクシュアリティ」「都市」「近代」などのテーマを基軸に作品を発表。2006年、写真集『In My Room』(2005)で第31回木村伊兵衛写真賞受賞。主なシリーズに、毎日欠かさず何気ない日常を撮り続ける〈毎日写真〉と〈カスババ〉、裸身の鷹野と被写体がともに並ぶポートレイト写真〈おれと〉、地面や壁に映る、都市を行き交う人々の影を撮影した〈影〉などがある。2010年に鈴木理策、松江泰治、倉石信乃、清水穣らとともに、企画展やレクチャーを行う「写真分離派」を設立。主な展覧会に「毎日写真 1999-2021」(国立国際美術館、2021年)、「カスババ この日常を生きのびるために」(東京都写真美術館、2025)など。

【ページ見本】