発刊:2024年1月10日
価格:2,750円(税込)
判型:B5判
頁数:128頁
ISBN978-4-907083-85-4 C0040

特集「自然史博物館が拓く新時代」
監修 橋本佳延 企画協力:兵庫県立人と自然の博物館

目次
1 巻頭言 自然史博物館の「つなぐ」機能の重要性 橋本佳延(兵庫県立人と自然の博物館)
13 基調論文 危機の時代の自然史研究 井田徹治(共同通信)

Part 1:地域の自然を未来につなぐ
22 標本・資料を未来につなぐ収蔵庫の役割 林 光武
30 新『神奈川県植物誌』の調査をめぐって 田中徳久(神奈川県立生命の星・地球博物館)
38 盲学校による博物館の活用 丸山啓志(千葉県立中央博物館)
44 こどもたちの自然体験のためのプロジェクト 大平和弘(兵庫県立人と自然の博物館)
52 NPOが支える博物館コミュニティ 西澤真樹子(大阪自然史センター)
60 自然史標本を楽しむミュージアムグッズの魅力 大澤夏美
66 レガシー事業の振り返り 高野温子・三橋弘宗(兵庫県立人と自然の博物館)
74 GBIF自然史標本を世界で共有する仕組み 細矢 剛+神保宇嗣(国立科学博物館)

Part 2:地域における自然へのまなざし
82 移動水族館が運ぶ自然とのふれあい 村山祐子(アクアマリンふくしま)
88 虫聞き文化がつなぐ地域と博物館 坂本 昇(伊丹市昆虫館)
95 NPOが築く地域博物館とシチズンサイエンス 河野弥生(芸北 高原の博物館)
112 地方の小規模博物館から伝える自然史 持田 誠(浦幌町博物館)

連載
108 ヴィンテージ・アナログの世界 レコードは不滅② 高荷洋一
112 動物たちの文化誌㊶ 竜蛇類の動物たち 早川 篤
120 欧州グリーン・インパクト⑯ フランスの森林 遠藤浩子

兵庫県立人と自然の博物館に新設されたコレクショナリウム 博物館で育った世代が活動を率いる(北広島市立芸北 高原の自然館) 千葉県立中央博物館で地層の標本に触れる千葉県立千葉盲学校の生徒

特集・著者紹介

橋本佳延:兵庫県立人と自然の博物館主任研究員。1976年愛知県生まれ。神戸大学大学院修了。専門は、植生学、生物多様性保全学。里山林や草原など人の生活に近い植生を対象とした研究や環境学習支援事業を実施。生物多様性の保全と持続可能な利用についての相談を、市民団体だけでなく行政や企業からも積極的に受けている。

井田徹治:共同通信社科学部編集委員。本社科学部記者、ワシントン支局特派員などを経て、2010年より現職。環境と開発、エネルギー問題をライフワークに、途上国の環境破壊の現場や、多くの国際会議も取材。著書に『生物多様性とはなにか』(岩波新書)など。

林 光武:博物館活動コーディネーター。1963年東京都生まれ。京都大学大学院理学研究科でイモリ類の分類学を専攻。1991年から栃木県立博物館に脊椎動物担当学芸員として勤務し、自然課長、学芸部長を歴任。2023年より、フリーな立場で博物館の資料管理や動植物の調査・保全に関する活動に従事。

田中徳久:神奈川県立生命の星・地球博物館館長。1965年神奈川県生まれ。横浜国立大学大学院修了。専門は植物社会学。1995年来、新『神奈川県植物誌』の編纂に関わる。その過程で標本DBを用いた地域植物相や県産タイプ標本の調査・研究に取り組む。共著書に『神奈川県植物誌2001・2018』など。

丸山啓志:千葉県立中央博物館研究員(古脊椎動物担当)。1985年生まれ。岐阜薬科大学卒業。京都大学大学院地質学鉱物学教室で学び、2017年より現職。専門は、鯨類化石などの哺乳類化石。共著に『はじめてのフィールドワーク 2:海の哺乳類編』など。

大平和弘:兵庫県立人と自然の博物館研究員。兵庫県立大学自然・環境科学研究所講師。専門は、造園学・環境計画学。地域資源を活かした景観づくりや学習の場づくりの実践、文化遺産の保護に関する調査研究に取り組む。著書に『神宿る隣の自然』など。

西澤真樹子:認定NPO法人大阪自然史センター教育普及事業担当。大学で博物館学を学んだ後、絵本美術館で農業体験や野外展示制作を担当。大阪へ移住し、2003年標本作成サークル「なにわホネホネ団」を結成。2012年から現職。イラストや本の仕事に『標本の作り方』『ホネホネたんけんたい』など。大阪市自然史博物館友の会評議員。

大澤夏美:ミュージアムグッズ愛好家。博物館体験や博物館活動におけるミュージアムグッズの役割を研究し、その成果を執筆やメディア出演、ワークショップなどを通じて広める活動を行っている。主な著書に『ミュージアムグッズのチカラ』シリーズ、『ときめきのミュージアムグッズ』がある。

高野温子:兵庫県立大学教授、兵庫県立人と自然の博物館主任研究員。1971年大阪府生まれ。専門は植物分類学。博物館では植物標本管理に携わり、植物標本デジタル化やAIを用いた標本データの自動入力システムの開発にも取り組む。著書に『標本画像を用いた植物種のAI同定システム』など。

三橋弘宗:兵庫県立大学講師、兵庫県立人と自然の博物館主任研究員。1970年京都府生まれ。専門は河川生態学。博物館展示に役立つ技術の開発や、ヒアリやクビアカツヤカミキリなど外来生物対策に取り組んでいる。

細矢 剛:国立科学博物館植物研究部長。1963年東京生まれ。筑波大学大学院修士相当課程修了後、民間の製薬会社研究員を経て現職。専門は菌類、特にビョウタケ目という小型のきのこを形成する子嚢菌類とカビの生物学。共著書に『菌類のふしぎ』など。

神保宇嗣:国立科学博物館標本資料センター副コレクションディレクター。1975年東京生まれ。東京都立大学大学院博士課程修了。専門は昆虫類、特にハマキガをはじめとした蛾類の分類学と生物多様性データベース。共著書に『日本の鱗翅類』など。

村山祐子:アクアマリンふくしま学習企画営業部総括主幹。1971年生まれ。福島大学教育学部卒業。同水族館で教育普及活動などの業務を行う。

坂本 昇:伊丹市昆虫館館長(学芸員)。1972年生まれ、大阪教育大学および同大学院に学ぶ。教育担当学芸員として教育事業や展示開発に従事する傍ら、チョウなどの飼育業務も担当してきた。2022年3月より現職。共著に『47都道府県博物館百科』などがある。

河野弥生:認定NPO法人西中国山地自然史研究会事務局スタッフ。1976年生まれ。広島文教女子短大卒業。2010年より現職。芸北高原の自然館を拠点に、保全活動や地域づくり支援などに取り組む。

持田 誠:浦幌町立博物館学芸員。1973年神奈川県出身。北海道大学大学院修了。大学での専門は植生学。現在は現場の博物館における諸課題の研究にも取り組む。共著に『「非常時」の記録保存と記憶化』など。